メタアナリシス
対象とする研究:脂質降下薬もしくは食事療法の効果を検討する比較試験で、心血管リスクを指標としていて、無作為化対照試験で、治療群別に死亡率または心筋梗塞の頻度が報告されており、6ヶ月以上の期間観察しているもの
除外基準: 治療前後でHDLまたはLDLの値に変化がないもの、すでにデータの信頼性に疑問が提示されているもの
検索データベース: Medline, Embase, Central, CINAHL, AMED、さらに最近のエディトリアルやレビューで参考文献として引かれているもの、専門家にインタビューし推薦されたもの
研究の選択基準: 二人の研究者が別々に論文を評価し、両者の評価の一致度をCohenのκで評価した。評価項目は次の通り。
- 割り付けが隠されているか
- 患者、治療者、臨床効果評価者において盲検化がなされているか
- ITT原理にどれだけ沿っているか
- benefitに鑑み早期中止がなされたかどうか
- フォローアップで脱落した患者はどれくらいか。
解析:
- 各研究の治療効果は分散逆数重み付け法で平均リスク比と95%信頼区間という形式で報告した。モデルはランダム効果モデルである。
- HDLやLDLの変化と臨床的アウトカムとの関連は分散逆数重み付けメタ回帰分析を行った。
- ホルモン治療による血栓促進効果など他の非脂質的効果を考慮に入れるため、特定の薬剤クラスを回帰モデルに導入した。
- HDL変化と冠動脈疾患との関連が薬剤クラス間で変化するかどうかを検討するため、F検定をおこなったが薬剤クラス間での違いはほとんどないようだった(P=0.73)。そこで薬剤クラスとの交互作用項は最終モデルからは除去した。
- 「事前に設定された感度分析pre-specified sensitivity analyses」として、より均質なサンプルでも検討するため、HDLを上昇させる(中性脂肪を減少させるというよりも)ような介入を行った研究のみに焦点を置き、n-3脂肪酸、低脂肪食、プロブコール、腎不全患者を使用した研究を除外した。さらに、トルセトラピブやホルモン療法といった有害な治療を除外した。
- さらなるpre-specified sensitivity analysesとして、観察期間が1年以内のもの、2年以内のものを除外した検討を行った。
- レビュワーコメントへの対応として、HDLを特に挙げることを目的とした薬剤(フィブラート、ニコチン酸)のみの検討、ならびにITT解析をおこなった研究のみでの検討を行った。
- 中性脂肪についての検討も行った。
結果
- スタディ選択
- 選択基準にあった158の無作為対象研究のうち、50はHDLとLDLの変化が報告されなかったので除外し、146,890人が治療群、152,420人が対照群として検討された。
- 薬剤クラスとしては、スタチン(54個の研究はスタチンvsプラセボの試験、8個は通常療法vs強化療法)、フィブラート(9個)、レジン(3個)、ニコチン酸+スタチンorフィブラートorレジン(6個)、n-3脂肪酸(9個)、acyl-Coa阻害薬(2個)、プロブコール(2個)、チアゾリジン誘導体(2個)、ホルモン療法(9個)、トルセトラピブ(2個)、低脂肪食+手術(5個)があった。
- 二人の評価者による研究の質の評価はかなり一致していた(κ 0.84-0.94)。
- 治療効果
- ベースラインの重み付け平均LDLは140 (SD 23)mg/dL、HDLは47 (SD 7.4)mg/dLであった。
- 重み付け平均値の変化はLDLで-23 (SD 19)、HDLで1.7 (3.1)だった。
- LDLは、n-3脂肪酸、チアゾリジン誘導体以外のすべての治療で低下した。いっぽうHDLは、n-3脂肪酸、低脂肪食、acyl-CoA阻害薬、プロブコール以外のすべての治療で増加した。
- 高用量スタチン治療(シンバスタチン80mgまたはアトルバスタチン80mg)群は標準スタチン治療群と比較するとHDLがわずかに低かった(-0.23, SD 0.83)。全体としてのスタチンはHDLを上昇させた(1.6, SD 1.5)。
- 臨床的アウトカムのメタ回帰分析
- LDL値の変化は冠動脈疾患、冠動脈疾患死、総死亡の対数化リスク比の分散を、単回帰でも、HDLと薬剤クラスを考慮に入れた多項回帰でも統計学的に有意に説明した。LDLが10mg/dL下がるごとに冠動脈イベントのリスク比は7.1% (95%CI 4.5-9.8%)低下した。LDL低下は、冠動脈イベントのリスク比分散の32%を説明した。
- LDLで調整後、HDL変化は、どのアウトカムとの間にも有意な関連を認めなかった。
- サンプル均質性に焦点をおいた感度解析では、単回帰分析でHDL変化と冠動脈疾患の対数化リスク比との有意な関連を認め、HDLが10mg/dL増えるごとに29%のリスク減少が見られた。しかし、LDLを導入した多項回帰分析では関連をみとめず、もともとみられた関連は、LDL低下とHDL増加が関連することを示しているにすぎないと示唆される。
- LDL変化はさらに、より長期の追跡を行った研究ではさらにおおきな分線を説明した(R2は6ヶ月以上の研究で0.41、1年以上で0.46、2年以上で0.51)。
- あとふたつ、HDL上昇する薬剤を使用した試験のみを使ったものと、ITTのみを使った感度解析でも、HDL変化と冠動脈イベントリスクとの関連は認められなかった。
- 同様に、中性脂肪変化と冠動脈イベントリスクについても、LDL変化で調整されている限り、関連を認めなかった。
- LDL変化は、HDL変化、中性脂肪変化、薬剤クラスで著末井後も冠動脈イベントの相対リスク減少を有意に予測した(7.4%, 4.4-10.4%, P<0.001)。
結論
HDLを変化させる治療を行っても、LDLで調整すると、その変化は心血管リスクを増やしも減らしもしない。
追記
あまり見慣れない手法が多用されている、メタアナリシスの文献。LDL低下だけに焦点を置くべきとの主張(アメリカ動脈硬化学会が好きそうな)を補完する役目を果たしそうな感じ。
当然ながらトルセトラピブの試験が入っていればこの結果は予想通りで、たとえばHDLにクラスがありトルセトラピブが増やしたHDLは悪玉HDLだったという仮説を否定できないが、トルセトラピブを除外した検討でもこの結論は支持されている。高用量スタチンにおいてHDLが減るという知見は面白い。
リファレンス Briel M et al. BMJ 2009;338:b92.
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