臨床試験リポジトリ

2009年3月13日金曜日

HDLコレステロールは治療的介入をする意味がない

デザイン
メタアナリシス
対象とする研究:脂質降下薬もしくは食事療法の効果を検討する比較試験で、心血管リスクを指標としていて、無作為化対照試験で、治療群別に死亡率または心筋梗塞の頻度が報告されており、6ヶ月以上の期間観察しているもの
除外基準: 治療前後でHDLまたはLDLの値に変化がないもの、すでにデータの信頼性に疑問が提示されているもの
検索データベース: Medline, Embase, Central, CINAHL, AMED、さらに最近のエディトリアルやレビューで参考文献として引かれているもの、専門家にインタビューし推薦されたもの
研究の選択基準: 二人の研究者が別々に論文を評価し、両者の評価の一致度をCohenのκで評価した。評価項目は次の通り。
  1. 割り付けが隠されているか
  2. 患者、治療者、臨床効果評価者において盲検化がなされているか
  3. ITT原理にどれだけ沿っているか
  4. benefitに鑑み早期中止がなされたかどうか
  5. フォローアップで脱落した患者はどれくらいか。

解析:
  1. 各研究の治療効果は分散逆数重み付け法で平均リスク比と95%信頼区間という形式で報告した。モデルはランダム効果モデルである。
  2. HDLやLDLの変化と臨床的アウトカムとの関連は分散逆数重み付けメタ回帰分析を行った。
    1. ホルモン治療による血栓促進効果など他の非脂質的効果を考慮に入れるため、特定の薬剤クラスを回帰モデルに導入した。
    2. HDL変化と冠動脈疾患との関連が薬剤クラス間で変化するかどうかを検討するため、F検定をおこなったが薬剤クラス間での違いはほとんどないようだった(P=0.73)。そこで薬剤クラスとの交互作用項は最終モデルからは除去した。
  3. 「事前に設定された感度分析pre-specified sensitivity analyses」として、より均質なサンプルでも検討するため、HDLを上昇させる(中性脂肪を減少させるというよりも)ような介入を行った研究のみに焦点を置き、n-3脂肪酸、低脂肪食、プロブコール、腎不全患者を使用した研究を除外した。さらに、トルセトラピブやホルモン療法といった有害な治療を除外した。
  4. さらなるpre-specified sensitivity analysesとして、観察期間が1年以内のもの、2年以内のものを除外した検討を行った。
  5. レビュワーコメントへの対応として、HDLを特に挙げることを目的とした薬剤(フィブラート、ニコチン酸)のみの検討、ならびにITT解析をおこなった研究のみでの検討を行った。
  6. 中性脂肪についての検討も行った。


結果
  1. スタディ選択
    1. 選択基準にあった158の無作為対象研究のうち、50はHDLとLDLの変化が報告されなかったので除外し、146,890人が治療群、152,420人が対照群として検討された。
    2. 薬剤クラスとしては、スタチン(54個の研究はスタチンvsプラセボの試験、8個は通常療法vs強化療法)、フィブラート(9個)、レジン(3個)、ニコチン酸+スタチンorフィブラートorレジン(6個)、n-3脂肪酸(9個)、acyl-Coa阻害薬(2個)、プロブコール(2個)、チアゾリジン誘導体(2個)、ホルモン療法(9個)、トルセトラピブ(2個)、低脂肪食+手術(5個)があった。
    3. 二人の評価者による研究の質の評価はかなり一致していた(κ 0.84-0.94)。

  2. 治療効果
    1. ベースラインの重み付け平均LDLは140 (SD 23)mg/dL、HDLは47 (SD 7.4)mg/dLであった。
    2. 重み付け平均値の変化はLDLで-23 (SD 19)、HDLで1.7 (3.1)だった。
    3. LDLは、n-3脂肪酸、チアゾリジン誘導体以外のすべての治療で低下した。いっぽうHDLは、n-3脂肪酸、低脂肪食、acyl-CoA阻害薬、プロブコール以外のすべての治療で増加した。
    4. 高用量スタチン治療(シンバスタチン80mgまたはアトルバスタチン80mg)群は標準スタチン治療群と比較するとHDLがわずかに低かった(-0.23, SD 0.83)。全体としてのスタチンはHDLを上昇させた(1.6, SD 1.5)。

  3. 臨床的アウトカムのメタ回帰分析
    1. LDL値の変化は冠動脈疾患、冠動脈疾患死、総死亡の対数化リスク比の分散を、単回帰でも、HDLと薬剤クラスを考慮に入れた多項回帰でも統計学的に有意に説明した。LDLが10mg/dL下がるごとに冠動脈イベントのリスク比は7.1% (95%CI 4.5-9.8%)低下した。LDL低下は、冠動脈イベントのリスク比分散の32%を説明した。
    2. LDLで調整後、HDL変化は、どのアウトカムとの間にも有意な関連を認めなかった。
    3. サンプル均質性に焦点をおいた感度解析では、単回帰分析でHDL変化と冠動脈疾患の対数化リスク比との有意な関連を認め、HDLが10mg/dL増えるごとに29%のリスク減少が見られた。しかし、LDLを導入した多項回帰分析では関連をみとめず、もともとみられた関連は、LDL低下とHDL増加が関連することを示しているにすぎないと示唆される。
    4. LDL変化はさらに、より長期の追跡を行った研究ではさらにおおきな分線を説明した(R2は6ヶ月以上の研究で0.41、1年以上で0.46、2年以上で0.51)。
    5. あとふたつ、HDL上昇する薬剤を使用した試験のみを使ったものと、ITTのみを使った感度解析でも、HDL変化と冠動脈イベントリスクとの関連は認められなかった。
    6. 同様に、中性脂肪変化と冠動脈イベントリスクについても、LDL変化で調整されている限り、関連を認めなかった。
    7. LDL変化は、HDL変化、中性脂肪変化、薬剤クラスで著末井後も冠動脈イベントの相対リスク減少を有意に予測した(7.4%, 4.4-10.4%, P<0.001)。

結論
HDLを変化させる治療を行っても、LDLで調整すると、その変化は心血管リスクを増やしも減らしもしない。

追記
あまり見慣れない手法が多用されている、メタアナリシスの文献。LDL低下だけに焦点を置くべきとの主張(アメリカ動脈硬化学会が好きそうな)を補完する役目を果たしそうな感じ。

当然ながらトルセトラピブの試験が入っていればこの結果は予想通りで、たとえばHDLにクラスがありトルセトラピブが増やしたHDLは悪玉HDLだったという仮説を否定できないが、トルセトラピブを除外した検討でもこの結論は支持されている。高用量スタチンにおいてHDLが減るという知見は面白い。

リファレンス Briel M et al. BMJ 2009;338:b92.

2008年10月10日金曜日

UKPDS80: 糖尿病に対する強化療法により大血管障害へのレガシー効果が得られる

スタディ
UKPDS (United Kingdom Prospective Diabetes Study)80

デザイン
RCT
患者: 2型糖尿病 4,209人
介入: 食事制限, 強化療法(SU剤 or インスリン、過体重患者にメトホルミン)。
注: 試験終了後に治療の割り付けは終了し、10年後の時点でフォローアップしている患者をITT解析したもの

結果
HbA1c: 割り付け終了後、群間差は消失
糖尿病関連のすべてのエンドポイント: RRR 9%, P=0.04
微小血管障害: RRR 24%, P=0.001
MI: RRR 15%, P=0.01
全死亡: RRR 13%, P=0.007
メトホルミン群の結果: 糖尿病関連エンドポイントのRRR 21%, P=0.01、MIのRRR 33%, P=0.005、全死亡のRRR 27%, P=0.002

追記
ACCORDの結果を受けて早期にまとめたものか?強化療法のメリットが強調された。

UKPDSは最初期の解析で、強化療法により微小血管合併症は有意に減少することを証明したが、大血管合併症のリスクを減少させることを証明できなかった。しかし過体重のDM患者に対するメトホルミン投与により心筋梗塞、全死亡のいずれも有意に減少した。これがその後の世界的なメトホルミンの使用につながったものである。

レガシー効果とは、この研究では強化療法と食事制限という二群に分けたのは最初だけのことで、しかもその後両群のHbA1cの違いは消失したにもかかわわず、強化療法群のメリットが持続しているということ。

その他詳しくはまだ読んでいない。

リファレンス Holman et al. NEJM 2008;359:1577-1589.

2008年10月4日土曜日

GISSI-HF試験:クレストールは心不全の経過に特に影響しない

スタディ
GISSI-HF試験

デザイン
RCT
患者:18歳以上のNYHA class II-IVの心不全患者、EFは問わない
介入:クレストール10mg (n=2285), プラセボ (n=2289)
期間:3.9年
一次エンドポイント:死亡までの時間、心血管的理由による死亡または入院までの時間
(目的:リピトールにおいてretrospectiveに、また小さなprospective studyで心不全の予後改善効果が示されている。クレストールは、CORONA試験において大規模前向き試験においても確認した。さらに追試してやろうというところ?)

結果
死亡:29%, 28% (HR 1.00, 95.5%CI 0.898-1.122, P=0.943)
心血管的理由による死亡または入院:57%, 56% (HR=1.01, P=0.903)
消化管副作用:1%, 2%

追記
CORONAスタディにおいて確認された、クレストールによる単独の心不全予後改善効果(心血管的理由による入院の減少、HR=0.92)の検証となる論文で、結果は否定的。サンプル数は両試験とも同等で、検出力に問題があるかどうかは不明。少なくとも強いreproducibilityのある結果ではない、というところ。著者らはCORONAではGISSI-HFよりも虚血性心不全が多かったことが異なった結果の理由ではないかと考察しているみたい。

ところでCORONAと同様これもGARAXYプログラムの試験の一つだが、銀河系的にどういう意味のある名前なのだろう?

DURATION-1試験: exenatideの週一回投与は、一日二日投与よりも有効である

スタディ
DURATION-1 (Diabetes Therapy Utilization: Researching Changes in A1c, Weight and Other Factors Through Intervention with Exenatide ONce Weekly) 試験

デザイン
RCT、非劣性試験
病気:2型糖尿病患者295人(mean HbA1c 8.3%, BW 102kg、罹病期間 6.7年)
介入:exenatide 2mg x1/week, 2ug x 2/day
期間:30週
一次エンドポイント:HbA1cの変化

結果
HbA1c:-1.9% vs -1.5%, 95%CI -0.54% to -0.12%, P=0.0023)
HbA1c<7%達成率: 77% vs 61%, P=0.0039
悪心:26·4%, 34·5%
嘔吐:10·8%, 18·6%
注射部位のかゆみ:17.6%, 1.4
上気道感染:8.1%, 17.2%

追記
exenatideはGLP-1受容体アゴニストという薬で、日本での認可がまだなのでよくわからないがインスリン、耐糖能、グルコース吸収などといったこれまでの薬の作用ポイントとは異なるメカニズムで血糖を下げるらしい。メトホルミン+SUで効果不良の患者に対し、ランタスとほぼ同等の効果をもたらすなどのpromisingな結果が蓄積されているが消化器副作用があるとのこと、また皮下注射というのが大きなデメリットではあろう。

効果が同等以上で、副作用が少ないようだから週1回投与でいいようなのだ。しかし上気道感染の多さは一体??

2008年9月27日土曜日

ADVANCE試験:糖尿病に対する強化療法は腎症発症を抑制し、網膜症発症・心血管イベント・総死亡には特に効果はない

スタディ
ADVANCE ( Action in Diabetes and Vascular Disease: A Preterax and Diamicron Modified Release Controlled Evaluation) 試験

デザイン
RCT
病気:2型糖尿病11,140人
介入:グリミクロン+αによる強化療法(目標6.5%以下)、標準療法(目標6.5%)
一次エンドポイント:主要心血管イベント(心血管死、非致死的MI、非致死的脳卒中)、主要微小血管イベント(新規か増悪する腎症または網膜症)
期間:5年

結果
HbA1c: 6.5%, 7.3%
一次エンドポイント: 18.1%, 20.0% (HR=0.90; 95%CI 0.82-0.98; P=0.01)
主要心血管イベント: 10.0%, 10.6% (HR=0.94, 95%CI 0.84-1.06, P=0.32)
心血管死: 4.5%, 5.2% (HR=0.88, 95%CI 0.74-1.04, P=0.12)
総死亡: 8.9%, 9.6% (HR=0.93, 95%CI 0.83-1.06, P=0.28)
主要微小血管イベント: 9.4%, 10.9% (HR=0.86; 95%CI 0.77-0.97; P=0.01)
糖尿病性腎症発症: 4.1%, 5.2% (HR=0.79, 95%CI 0.66-0.93, P=0.006)
糖尿病性網膜症発症: 6.0%, 6.3% (P=0.50)
重篤な低血糖: 2.7%, 1.5% (HR=1.86, 95%CI 1.42-2.40, P<0.001)

追記
治療薬は、ベースラインではすべて両群差がなく、終了時にはグリミクロン 90.5%, 1.6%、メルビン 73.8%, 67.0%、チアゾリジン 16.8%, 10.9%、アカルボース 19.1%, 12.6%、グリニド 1.2%, 2.8%、インスリン 40.5%, 24.1%となっている。アスピリン、スタチン、降圧薬に群間の差はないようだ。

ACCORDでは強化療法群の死亡率が高かったが、強化療法群ではすでに心血管死のリスク増大が証明されているrosiglitazoneの内服が明らかに多いことを当該項目で述べた。本試験ではどちらかはあきらかでないがチアゾリジン誘導体の内服に群間差はなく、死亡率にも差がないことに留意すべきである。ADVANCEも、ACCORDも、強化療法による心血管リスクの低下が見られなかったが、これはメルビンの内服にあまり差がない研究(どちらもそうである)では予想通りというべき結果であってこれといって目新しいわけではない。

ACCORD試験: 糖尿病に対する強化療法は死亡率を増大させる

スタディ
ACCORD(The Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes Study Group)スタディ

デザイン
RCT
病気:糖尿病 10,251人(平均62.2歳、HbA1c median 8.1%、女性 38%、心血管イベントの既往 35%)
介入:強化療法(目標A1c 6.0%以下),標準療法(目標A1c 7.0-7.9%)
一次アウトカム:非致死的MI、非致死的脳卒中、心血管死
期間:mean 3.5年(interim analysisで中止)

結果
HbA1c:6.4%, 7.5% (1年の時点)
一次アウトカム:6.9%, 7.2%(HR 0.90, 95%CI 0.78-1.04, P=0.16)
死亡:5.0%, 4.0%(HR 1.22, 95%CI 1.01-1.46, P=0.04)
心血管死:2.6%, 1.8% (HR 1.35, 95%CI 1.04-1.76, P=0.02)
非致死的MI:3.6, 4.6% (HR 0.76, 95%CI 0.62-0.92, P=0.004)
医療処置が必要な低血糖:10.5%, 3.5% (P<0.001)
心不全:3.0%,2.4% (P=0.10)
体重増加>10kg:27.8%, 14.1% (P<0.001)
血圧:126.4±16.7/66.9±10.5, 127.4±17.2/67.7±10.6 (P=0.002 for sBP, <0.001 for dBP)
LDL:90.8±33.5, 90.6±34.0 (P=0.74)

追記
総死亡の差はCoxモデルの観点から1,2,3年の各時点で安定した差であるようだ。HRから見ると総死亡の差はほぼ心血管死によるものと思われるが、非致死的MIは強化療法群のほうが少ない。これは矛盾した結果である。またLDLには両群有意差がなく、血圧は標準療法群が高いにもかかわらずその違いを吸収して強化療法群が死亡リスクが高いという結果である。

使用された薬剤は、メルビン94.7 vs 86.9%、アマリール 78.2 vs 67.6%、repaglinide 50.2 vs 17.7%、rosiglitazone 91.2 vs 57.5%、グルコバイ 23.2 vs 5.1%、exenatide 12.1 vs 4.0%、インスリン 77.3 vs 55.4%。すでに明らかに心血管イベントとの関係が証明されているrosiglitazoneに明確な群間の差がある。強化療法群の91.2%が内服しているので層別化も困難であろう。この心血管死の多さがrosiglitazoneの服用の差によるものである可能性は否定できない。rosiglitazoneの心血管死のRRは過去の検討から1.4-1.5程度と推定される。強化療法群の90%と標準療法の60%がrosiglitazoneを内服し、心血管死の頻度の差がこの因子だけに由来すると仮定すると、強化療法群の心血管死のRRは1.1と推定できる。これは本研究の心血管死のHRの95%信頼区間に入っていて、rosiglitazoneによる差であることを否定できる材料はないのではないだろうか。過去の検討と同様、死亡率の差がrosiglitazoneによる差だとして、それは心不全の副作用に由来するものではない。

リファレンス NEJM 2008;358:2545-2559.

2008年9月26日金曜日

ONTARGET試験: ミカルディスの心血管イベント予防効果は、ACEIと同等である

スタディ
ONTARGET試験

デザイン
病気:心血管疾患患者または高リスクの糖尿病患者
介入:ramipril, ミカルディス, 併用
期間:median 56ヶ月
主要アウトカム:心血管死、心筋梗塞、脳卒中、心不全による入院

結果
主要アウトカム:16.5%, 16.7%, 16.3%
咳漱:4.2% vs 1.1%
血管浮腫:0.3% vs 0.1%
腎機能障害:10.2%, 10.6%, 13.5%

リファレンス NEJM 2008; 358:1547.